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【回顧 3】終焉/1

小学校一年生の夏の事だ。
8月に入ったばかりの、とても暑い日、いつものように私たちは、空き地で秘密基地ごっこに興じていた。

東北の夏休みは短い。
もうすぐ夏休み終わるね、なんていうことを話しながら、土管に潜り込んで外を見張ったり、資材置き場に置いてある不要な角材を使って玩具を作ったりして遊ぶのが日課だった。

普段は遊んでいるところに様子を見に来たりしない父が、突然現れた。
「出かけるから家に帰るぞ」
「留守番してるから行って来ていいよ」
「全員で出かけなきゃダメだ」
いつもは、出かけるから従妹の家で遊んでいなさい、というのに、この日は半ば無理やり、手を引かれてそこを去った。
家に着くと、風呂に入れられた。
そして、母方の祖母から送られてきたお気に入りの服を着るように言われた。
「どこに行くの?」
父も母も、答えなかった。

車に乗り込む直前、父が言った。
「みんなに挨拶してきなさい」
そんなことを言われたのは初めてだったけれど、何も考えずに空き地に戻り
「またね!」
と挨拶をして戻った。
車の中では、いつもなら童謡のカセットを流して、父や母が民話や昔話を聞かせてくれるのに、誰も話さず、重い空気だけが流れていた。
東北自動車道に乗り、岩槻を過ぎた辺りで
「おばあちゃんちに行くの?」
と聞いたけれど、父も母も黙っている。

C県に入ったところで、母が泣き出した。
「お母さん?」
と声をかけても、答えずに泣くばかりだった。
そして通り沿いにある、「エデン」というホテルに入った。
お城のようなつくりをしていて、今思うとそこはラブホテルだったんだろう。
部屋に入ると、母は私に、おにぎりを食べさせた。

食べていると父が私に向かって言った。
「会社が倒産したんだよ。お父さんのせいで、お前たちはもう生きていけない」
父が泣いていた。
泣いていたけれど、悲しさよりも、何か鬼気迫る重い空気が感じられて、私は父を「恐い」と思った。

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